「類」に属する「個」としての肖像画
竹下聡は自身を一種の肖像作家であると認識している。
肖像とは言うまでもなく人の像を指すものだが、同時に像主の置かれた環境を内包した社会の表層を表している、と言う事も出来る。
竹下が作品を通して見つめているものは、それぞれの環境の中で、社会生活たる「類」に属する人が演じる結果としての「個」であり、自身に課せられた演目を全うする者たちの肖像である。社会と無関係に生きてゆく事の難しい現在、すべての人が社会生活の中で何らかの役割を振り分けられ、それぞれが個人としての衝動を制御しながら、記号化された役割に従事している。
「子供のように」我儘であった人間は成長するにつれて理解や忍耐を覚えて「大人に」なり、矛盾やジレンマを抱えながらも社会の構成要素としての人生を全うする。
竹下が描く肖像は、自らを記号化する事で文明社会の中での調和を図る人々の象徴的なイメージであり、彼の作品中のモティーフが形作るコンポジションは、記号としての役割を全うしつつ、互いに共存しながらコミュニティーを形成する我々の姿そのものと言い換える事ができる。
そして作品に通底する竹下の視点に導かれて我々が発見するのは、個としての属性を離れ、類の中にあってこそ存在する、人としてのつつましい幸福である。
社会生活での記号化を抑圧と解釈し、美術を個人の解放手段として捉えてきた現代アートの潮流は、過度なロジックの先行がかえって鑑賞者との距離を生み出し、その一部は既に社会との剥離を始めつつある。
美術作家も社会の中で制作を続ける以上、他者と途絶した存在である事は出来ないし、日常の実感を離れたコンセプトもまた、成り立つ事は不可能である。
せめて調和を形作る一員で在りたいと願う竹下のささやかな実感は、類を形成する個としての肖像を見つめてゆく中で、
改めて我々個人の、社会に還元可能な「個」としての在り方を問いかけているのである。
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1980年 宮崎県に生まれる
2002年 京都造形芸術大学芸術学部美術科洋画コース卒業
2004年 広島市立大学大学院芸術学研究科絵画専攻(油絵)修了
2008年 個展 八千代の丘美術館センターギャラリー/広島
2009年 個展 東京コンテンポラリーアートフェア2009(ギャラリー玉英ブース)
竹下聡 略歴
Soh TAKESHITA
Augustus
2009 パネル/油彩
91.0×66.5cm
Augusta
2009 パネル/油彩
91.0×66.5cm